交通事故によりケガを負った場合、治療費や生活費の問題が生じます。賠償金が支払われるまでに時間がかかることも多く、事故直後の生活費に困る人も少なくありません。しかし、いくつかの制度や保険を活用することで、当面の生活費を確保する手段があります。また、障害が残った場合には、将来の生活費を補償してくれる制度も存在します。ここでは、事故後に生活費をどう確保するか、賠償金が出るまでの対応策、将来の生活費を補償してくれる制度について説明します。
賠償金が出るまでの生活費の捻出方法
交通事故の賠償金は、損害額が確定するまで時間がかかることが多く、示談や裁判の結果が出るまではすぐに支払われません。そのため、賠償金が支払われるまでの間、生活費を確保するためには以下のような手段が考えられます。
人身傷害保険・搭乗者傷害保険
交通事故に遭った際に、契約者またはその家族が保険から支払われる保険金です。治療費や慰謝料、休業補償などが支払われます。特に、人身傷害保険は、被害者に過失がある場合でも支払われるため、加害者側から十分な賠償が受けられない場合や、加害者が無保険であった場合に役立ちます。
損害賠償金の仮払い
賠償金が確定する前に、損害賠償金の一部を仮払いしてもらうことができる場合があります。特に、事故により仕事ができなくなり、収入が途絶えてしまった場合には、相手方の保険会社に休業損害や慰謝料の一部を先に支払ってもらうことが一般的です。
生命保険
交通事故で亡くなっていない場合でも、契約している生命保険から保険金を受け取れることがあります。生命保険金は、被保険者が支払った保険料に基づくもので、損害賠償金から控除されないため、賠償金とは別に受け取ることが可能です。
労災保険
事故が通勤途中や仕事中に発生した場合、労災保険から休業補償や治療費が支払われます。労災保険には支払い限度がなく、後遺障害が残った場合は年金も支給されます。
傷病手当金
健康保険の被保険者が病気やケガで働けなくなった場合、傷病手当金を受け取ることができます。これは標準報酬日額の2/3に相当する金額が支給されるもので、会社から十分な報酬が受け取れない場合に、生活費を補う手段となります。
所得補償保険
加入している場合には、所得補償保険から休業損害の補償を受けることができます。これにより、収入が減少した場合でも生活費を補填することが可能です。
仮渡金
加害車両が自動車の場合、自賠責保険から40万円、20万円、5万円といった仮渡金を受け取ることができます。これは最終的な賠償金額から差し引かれますが、治療費や生活費に充てるために非常に有効です。
生活保護
もし資産がなく、収入の見込みもない場合、生活保護の申請をして国から支援を受けることが可能です。後に賠償金を受け取った場合には、生活保護金を返還しなければならないことがあるため、その点に注意が必要です。
障害が残った場合の将来の生活費
事故で重度の障害が残り、働けなくなった場合には、将来の生活費についても不安が生じます。その際、以下のような方法で生活費を確保することができます。
障害年金
交通事故で重度の障害が残った場合、一定の要件を満たせば障害年金を受給することができます。障害年金は、認定される等級によって支給額が異なり、厚生年金や共済年金の加入者は、障害厚生年金や障害共済年金も受け取ることができます。
労災年金
労災保険に加入している場合、後遺障害等級が7級以上であれば、労災年金を受け取ることができます。ただし、労災年金と障害年金の支給額には調整が行われることがあり、併せて支給される場合には一部が減額されることがあります。
身体障害者認定
身体障害者認定を受けると、税金や医療費の軽減、福祉サービスの提供など、生活費の負担が軽減されます。医療費の自己負担減額や補装具の交付、公共交通機関の運賃割引など、日常生活での負担を軽くするための支援が受けられます。
賠償金の補償内容
損害賠償金は、交通事故による損害を補償するためのものです。具体的な補償内容は以下のように分けられます。
- 治療費・入院費用:事故によるケガや病気の治療にかかる費用。
- 休業損害:事故により仕事ができなくなった場合の収入補償。
- 慰謝料:事故によって受けた精神的苦痛に対する補償。
- 逸失利益:将来得られるはずだった収入を失ったことに対する補償。
- 住宅改造費:重度の障害が残り、自宅を車椅子対応などに改造するための費用。
- 車両改造費:車椅子を利用するために自動車を改造する費用。
- 将来介護費:後遺症のために長期的な介護が必要な場合の介護費用。
これらの補償を通じて、事故後の生活を支えることが可能です。
まとめ
交通事故によって収入が途絶えると、賠償金が支払われるまでの生活費に困ることが多いですが、いくつかの保険や制度を活用することで、生活費を確保する方法があります。さらに、将来の生活費についても、障害年金や損害賠償金によって支援を受けることができます。事故後の生活に不安がある場合は、各種保険や補償制度を積極的に活用し、将来の生活を支える準備を進めることが大切です。