むち打ちで後遺障害認定を受ける可能性が低い理由と対処法を総合的に解説します。この記事では、後遺障害認定確率が低い理由、認定確率を上げる方法、認定されない場合の対処法についてご紹介しています。むちうちが後遺症になりそうな方もなっている方も、ぜひこの記事を参考にしてください。
むちうちの後遺障害認定確率は低い?
交通事故の影響により、手足や首に痛みやしびれ、麻痺といった症状が現れることがあります。所定の日数を経過しても完全に治癒せず、後遺障害が残った場合、後遺障害の認定考える人も多いですがどうしたらいいか分からないと、多くの人が頭を悩ませています。しかし、後遺障害が残っているにもかかわらず、後遺障害に該当しないと判断されることもあります。自賠責に後遺障害認定請求が請求され、認定される確率は、およそ5%であり、決して大きな確率ではありません。特に、むち打ち症の後遺症の可能性は更に低いと報告されています。むち打ち症の後遺症が認定される確率は、おおむね5%未満であり、100人がむち打ち症の後遺症認定申請を行ったとしても認められるのは5人以下ということです。したがって、むち打ち症の後遺障害が認定される可能性は、かなり低いといえます。
後遺障害が認定されない理由
ここまで、後遺障害の申請をしても認められる可能性は低く、更にはむち打ちであれば認められる確率はもっと低いことを説明しました。ではなぜ、むち打ちで後遺障害が認定されることが低いのでしょうか。むち打ちで後遺障害が認められる可能性が低い理由を解説します。これらの項目にあてはまるものがあった場合、後遺障害認定を申請しても認定されない可能性が高い、ということを覚悟しておく必要があります。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
原因①治療期間が短い・通院日数が少ない
むち打ちの症状があまり酷くない場合は、通院が疎かになりがちです。しかし治療期間が短かったり、通院日数が少なかったりすると、後遺障害の認定は難しくなります。後遺障害の認定を受けるには、症状固定で後遺症になったと判断されるまで通院を続ける必要があります。治療期間が短い場合は、後遺障害とは認められなくなる可能性があります。また、通院の回数も考慮しなければなりません。仕事が忙しいからと通院をしないでいると、その程度の通院で改善する位の症状だったと判断され、後遺障害認定を受けられなくなる確率が上がります。個人的な判断で通院を軽視した場合は、後遺障害認定を受けられなくなるでしょう。
原因②医師に自覚症状が伝わらない
症状には首の痛み、手足のしびれ、ふらつき、偏頭痛などの症状が特徴的です。具体的な自覚症状は、特に多数の症状が現れている場合、医師に正確に説明することが困難です。また、受傷後数日経ってからむち打ち症の兆候が現れる場合もあり、それが交通事故が原因のむちうちかどうか自分でも判断できず、自覚症状として医師に伝えられないケースもあるでしょう。医師に自覚症状を伝えられなければ、むちうちの症状について正確な内容が記載された診断書が発行されない可能性があります。その結果、後遺障害認定を受けられない確率が高くなるでしょう。
原因③症状の一貫性・連続性がない
むち打ちの後遺障害認定が難しくなる原因の1つに、患者が伝えるむちうちの症状に連続性や一貫性がないケースが多いということがあります。首の痛みや肩こりといった典型的な症状以外にも、頭痛や吐き気、しびれなどの症状が出ることがあります。このような症状は、「大したことはないだろう」という理由で、受診した際も医師に伝えないことがあります。しかし日数が経ってから症状が酷くなって、改めて新しい症状を伝えたり、逆に症状が軽くなったからと伝えなかったりすると、前の症状が消えたと判断されてしまいすのでお気をつけください。後遺障害認定を受けるためには、症状が連続・一貫している必要があります。しかし診察を受けるたびに現れる症状が変わったり消えたりする症状があると、むちうちの症状に連続性・一貫性があるとは認められず、後遺障害認定を受ける確率が下がります。
原因④後遺障害診断書が不十分
後遺障害認定をする際には、医師の後遺障害診断書が不可欠です。しかし、これには専門知識が必要であり、すべての医師が完璧な後遺障害診断書を作成できるわけではありません。不完全な後遺障害診断書をそのまま提出すると、後遺障害認定を受けられる可能性は低くなってしまいます。
さらに、後遺障害認定の手続きには、は被害者請求と事前認定の2通りがあります。後者を選択した場合、相手方の保険会社が手続きを行うため、後遺障害診断書などの書類が不十分なまま提出される可能性があります。
したがって、後遺障害診断書の医学的内容が不十分であったり、認定を受けるために有利な資料が不足してたりすると、後遺障害認定を受けるのが難しくなるでしょう。
出典・参照:後遺障害診断書とは?有利に後遺障害等級認定を受けるにはどうしたらいい?| ベリーベスト 法律事務所
原因⑤症状を裏付ける他覚的所見がない
むち打ち症で後遺障害認定の可能性が低いのは、他覚的所見がないという点が挙げられます。痛み、しびれ、麻痺などの症状があっても、レントゲンやMRIで異常が確認できないため、これらの症状が交通事故に起因するものであることを証明することは困難である為です。したがって、むち打ち症の症状を医学的に証明することができないため、後遺障害の認定を受けても低い等級の認定しか受けられなかったり、非該当として後遺障害と認められなかったリ、そもそも後遺障害認定を申請できない可能性があります。
出典・参照:むちうちの他覚所見|弁護士法人心
原因⑥交通事故の規模が小さい
後遺障害慰謝料の認定の可能性は、交通事故の大きさによって異なる場合があります。軽微なものであれば、発生した被害は後遺症になるような怪我ではないと思われるため、後遺障害認定を受けられなくなる可能性があります。しかし、交通事故が軽ければ後遺障害認定を受けられないと、決まっている訳ではありません。むち打ちは軽度の事故でも発生する可能性があり、その症状は長期間にわたって続く可能性があります。しかし後遺障害認定を受けられる確率は、低くなってしまうでしょう。むちうちで後遺障害認定を受けるために必要な検査はむちうちで後遺障害認定の申請をする際、必ず検査をしていなければいけないという決まりはありません。しかし検査を受けて、他覚的所見が診断書に記載された場合は、後遺障害が認定される確率が高くなります。そのため、後遺障害等級認定のために、医師が必要と認めた場合は積極的に検査を受けることが賢明です。
むちうちで後遺障害等級認定を受けるために必要な検査
むちうちで後遺障害等級認定を申請する際、必ず検査をしていなければいけないという決まりはありません。しかし、検査を受けて、他覚的所見が診断書に記載された場合は、後遺障害等級に認定される可能性が向上するでしょう。
後遺障害の等級認定を受けるためにも、医師が必要と認めた場合は、積極的に検査を受けるとよいでしょう。
ここでは、むち打ちに対して行われる一般的な検査として、神経学的検査と画像検査の2つを紹介します。
検査①画像検査
画像検査とは、レントゲン(X線検査)やMRI検査、CT検査などを指しています。むち打ち症と診断された場合、通常、まずレントゲン検査が行われます。より詳細な情報が必要な場合は、磁気共鳴画像法(MRI)またはCTスキャンを実施することがあります。X線とCTスキャンは、骨折や体内のかたい組織の状態を確認します。椎間板や神経などの軟組織を測定する場合には、信頼性が低いため後遺障害認定においてX線とCTスキャンはあまり重要視されないでしょう。一方、MRIは磁場を発生させ、これらの軟部組織をより詳細に評価するため、ここで他覚的所見が得られた場合は12級または14級の後遺障害の確率が高くなります。
出典・参照:「むち打ち」で後遺障害認定を取得する方法 総まとめ|横浜クレヨン法律事務所
検査②神経学的検査
むちうちになっても、レントゲンやCT検査、MRI検査で必ず異常が確認できるとは限りません。しかしそんな場合でも、神経学的検査を受ければ、異常があることを証明できる場合があります。
代表的な神経学的評価としては、患者が座った状態で頭部を手で圧迫する「ジャクソンテスト」、打腱器で筋肉を叩いて反射作用を調べる「腱反射テスト」、腕を刺激する「感覚テスト」、病理的反射を確認する「ホフマンテスト」などが考えられます。さらに、必要に応じて、皮膚温、握力、徒手筋力、筋電図などを行うこともあります。これらの神経学的チェックで異常が確認されれば、画像検査で異常が確認されなくても後遺障害認定を受けられる可能性がありますので、必ず医師の診断を受けてください。
むち打ちに関して、後遺障害の認定確率を高めるには?
そもそも後遺障害の認定を受けられる確率は低く、むち打ち症の場合はその確率がさらに低下することを述べました。では、むち打ちの状況で後遺障害認定の確率を上げるにはどうすればいいのか、もう少し詳しく説明します。後遺障害認定を受けるためにはどのようなポイントに気をつければいいのか、ぜひ参考にしてみてください。
認定確率を上げる方法①すべての自覚症状を伝える
後遺障害認定の確率を上げるには、後遺障害認定の確率を上げるには、後遺障害診断書に正確な内容を記載してもらうことが重要です。治療開始時から、医師にすべての自覚症状をしっかり伝えてください。医師に症状を聞かれたら、自覚している症状はなるべく詳細に伝えてください。どんな些細なことでもむちうちの症状の可能性があり、後で悪化する可能性もあります。気のせいだと自己判断せずに、全て伝えることが大切です。また、伝え方にも工夫してみましょう。ただ手足がしびれると伝えるだけではなく、普段から痛むのか痛みが酷くなる時はあるのかを伝えます。例えば、とくに雨の日にひどく手足がしびれるというように伝えてみると良いでしょう。
自覚症状に連続性や一貫性があるかどうかも重要になります。一時期は治ったのに、数日たって痛むと言って治療を再開したケースも、一貫性がないと判断されることがあるでしょう。
認定確率を上げる方法②後遺障害診断書に不備がないか確認する
後遺障害認定において審査でもっとも重視されるのは、医師が作成する後遺障害診断書だと言われています。そのため後遺障害認定確率を上げるには、医師が発行した後遺障害診断書をよく確認し、内容の間違いや記載漏れがないかしっかり見直すことが重要になります。ただ、訂正が必要な場合も自分で修正してはいけません。医師に後遺障害診断書の修正を依頼し、訂正や書き直しをしてもらうようにしましょう。
後遺障害診断書の内容が適切かどうか判断できないという場合は、詳しい弁護士に相談し、確認してもらうことをおすすめします。もし後遺障害診断書に不備があれば、弁護士が指摘してくれるでしょう。
認定確率を上げる方法③医師の指示に従って通院する
治療期間が短かったり、通院日数が少なかったりすると後遺障害認定を受けられなくなる確率が高くなります。後遺障害認定の確率を上げるためにも、医師の指示に従い、適切に通院を続けることが大事です。
むちうちの場合は、症状固定までの日数は約6ヶ月と言われています。そのためむちうちの治療には6ヶ月以上通った方が良く、通院日数は月に10回以上が目安とされています。仕事が忙しくても、3日に1回は通院しましょう。
なお、ここで気をつけなければならないのは、症状固定で後遺症と判断されるまで病院に通院している必要があるということです。整骨院・接骨院や鍼灸院へ通うからと病院への通院を止めていた場合、後遺障害診断書を書いてもらえなくなる可能性がありますので、注意が必要です。
認定結果に納得できない場合の対処法
どんなに気をつけて後遺障害認定を請求しても、認定された等級が低かったり、非該当とされて認定を受けられなかったりすることがあります。とくにむちうちの場合はそうなる確率の方が高いでしょう。
もしも後遺障害認定を請求しても納得いく結果がでなかった場合は、どうすればいいのでしょうか。
異議申し立てを行う
後遺障害認定で納得できない結果が出ても、諦める必要はありません。認定結果に納得できない場合は、異議申し立てが可能です。異議申し立てとは、後遺障害認定の再審査を求める手続きになります。
異議申立てで必要な書類は、「異議申立書」です。この書類だけでも異議申立ては可能ですが、前の結果と変えたい場合は添付書類として、「新しい後遺障害診断書」や「医師の意見書」、「検査画像・検査記録」や「カルテ」、「医療照会の回答書」や「被害者の陳述書」などを提出しましょう。
異議申し立てには制限回数がなく、時効にならない限り何度も申し立てができます。しかし、同じ書類を何度も提出している限り、認定結果が変わることはないでしょう。
異議申立てをする際には前の提出で足りなかったものは何なのかを考え、自分に有利な書類を集めて、提出し直すことが重要です。
出典・参照:後遺障害が非該当となった場合の対処法|認定されない理由とは|弁護士法人ALG&Associates
紛争処理制度を利用する
異議申立てでも納得する認定を受けられなかった場合、紛争処理制度を利用することになります。
紛争処理制度を行う際の必要書類は、「紛争処理申請書」と「医療照会等の同意書」、「交通事故証明書」や「保険会社または共済組合からの通知書」などです。また別紙にて、紛争処理を依頼した理由や何が問題になっているのか、請求内容や交渉の経過について記載しておく必要があります。
この他に添付書類として、以前に作成した後遺障害診断書や画像検査の結果、医師の意見書やカルテ、被害者の陳述書などを提出します。
紛争処理制度では基本的に、異議申立てで提出した書類が審査の対象となることに注意してください。異議申立てを経ずに、紛争処理でいきなり新たに有利な資料を出すことはできません。
裁判を起こす
異議申立てや紛争処理制度を利用しても後遺障害認定を受けられなかった、あるいは納得する結果を得られなかった場合、最期の手段となるのが裁判を起こす方法です。裁判を起こすと、裁判所で後遺障害認定結果が妥当なものかを判断してもらうことになります。
裁判を起こす場合、後遺症でどのような症状があるのかを記した書類や、治療経過を示す証拠としてカルテや後遺障害診断書の提出が必要になるでしょう。これまで受けた後遺障害認定結果を覆すだけの証拠や、資料を提出しなければなりません。
裁判を自分で行うことは難しいこと、裁判を有利に戦うために、後遺障害認定に精通する弁護士に依頼することをおすすめします。
後遺障害が認められなかった場合の慰謝料について
後遺障害が認められないと慰謝料がもらえないということはありません。後遺障害が認められない場合でも、むち打ちで入院や場合の入通院慰謝料や、むち打ちで病院や整骨院で治療を受けた場合の通院慰謝料はもらえます。しかし、後遺障害が認定されないということは、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」はもらえません。
慰謝料の相場には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの基準があることを認識しておく必要があります。自賠責基準が最も低い相場であるのに対し、任意保険基準は自賠責保険基準から弁護士基準の以下、弁護士基準が最も高い水準になります。
まとめると、相手方が任意保険に加入している場合は任意保険基準を、相手方が保険に加入していない場合は自賠責基準を、弁護士に依頼した場合は弁護士基準が適用されることになります。
後遺障害認定が通らなくても後遺障害慰謝料が認められるケース
通常、後遺障害で認定されなかった場合、後遺障害慰謝料は認められません。しかし稀なケースではありますが、後遺障害認定を受けられなくても後遺障害慰謝料を認められるケースがあります。
後遺障害非該当でも後遺障害慰謝料の対象となる可能性が高いのは、後遺障害に該当するほどではないけれども、顔面や体に傷痕が残ってしまったケースです。
例えば、容姿が重要視される職業(モデルやホステス等)に就いていたケース、あるいは被害者の年齢が5歳以下と幼少だったケース、看護師や接客業で人と間近で接する機会があるといったケースなどが、対象になりやすいでしょう。
また顔や体の傷が残っていなくても、認められるケースもあります。むちうちの症状により退職せざるをえなくなったケース、動作に支障が出ていることが認められたケース、事故の後で既往症が悪化してしまったといったケースなどもあります。
むちうちによる後遺障害認定確率は特に厳しい
むちうちによる後遺障害認定の確率はとても低いこと、またその理由について解説してきました。むちうちは画像検査でも異常が見つからないケースが多く、他覚的初見がないために後遺障害認定の確率はかなり低くなってしまう傾向にあります。
この記事では後遺障害認定を受けるために必要な検査や、認定の確率を上げるための方法、後遺障害が認められなかった場合の対処法についても解説しています。
記事を参考に、後遺障害認定の確率を少しでも上げられるよう医師の指示に従い、検査を受けて適切な期間、頻度で通院を続けることが大切です。