警察への届け出はしましたか?

 

 

警察への届け出はしましたか?事故直後の対応が未来を左右します

交通事故は突然起こるものです。混乱の中で冷静に判断するのは難しいですが、事故直後の行動ひとつで、その後の補償・過失割合・後遺障害認定にまで影響することがあります。 今回は、事故現場で必ず行うべき警察への届け出と、人身事故への切り替えに関する重要なポイントを、弁護士監修のもとで詳しく解説します。

1. まずは「110番通報」と証拠の確保

事故に遭ったら、まずすぐに110番へ通報してください。 自車・相手車両を移動する前に、現場写真の撮影を行うことが大切です。 可能であれば以下のような角度で撮影しておくと、後の証拠として非常に有効です。

  • 車両の位置関係(全体を写す俯瞰写真)
  • 衝突地点・ブレーキ痕・破片の散乱位置
  • 信号・標識・交差点の見通し
  • 周囲の交通量や天候などの状況

事故直後はパニック状態になりがちですが、「まず撮る」を意識してください。 スマートフォンの動画撮影でも構いません。事故の瞬間を正確に再現できる証拠になります。

2. 「謝罪」よりも「証拠」が優先

加害者がその場で「すみません」「全て自分が悪いです」と謝罪しても、 それは法律上の過失の認定や責任の確定を意味するものではありません。 実際に保険金や賠償金を支払うのは加害者本人ではなく、相手方の保険会社です。

そのため、事故原因の判断は、あくまでも客観的な証拠に基づいて行われます。 このとき判断の鍵を握るのが次の3つの資料です。

  • 実況見分調書(警察が作成する現場の公式記録)
  • 目撃者の証言
  • 現場写真やドライブレコーダー映像

事故直後の「感情的な発言」よりも、冷静に残された証拠の方が法的には圧倒的に重要です。 どちらの言い分が正しいかは、これらの資料によって判断されます。

3. 警察への届け出がなければ「事故はなかった」ことに

警察に届け出をしなければ、事故そのものを証明する「交通事故証明書」が発行されません。 この書面は、自賠責保険や任意保険の請求時に必ず必要となる公的証明書です。

届け出を怠ると、保険金が支払われないだけでなく、 過失割合や賠償交渉の場面で事実関係の立証が極めて難しくなる恐れがあります。

「相手が軽く済ませたいと言ったから…」 「お互いに大丈夫と言い合って帰った」 ― そのまま放置すると、数日後に痛みが出ても補償を受けられません。

4. 人身事故と物損事故の違いを理解していますか?

交通事故の届け出には「人身事故」「物損事故」の2種類があります。 この区別を誤ると、受けられる補償の範囲が大きく変わります。

物損事故として処理されるとどうなる?

  • 自賠責保険の請求ができない(人身事故のみが対象)
  • 実況見分調書が作成されない(過失割合を立証できない)
  • 結果的に治療費や慰謝料を請求できなくなるリスクがある

事故直後に「物損でいいですよ」と処理されても、後から痛みが出るケースは多発しています。 少しでも違和感があれば、必ず人身事故で届け出ましょう。

5. 人身事故への切り替え手続き

もし、すでに物損事故として処理されていても、医師の診断書を提出することで人身事故に切り替えることが可能です。

手順は以下の通りです。

  1. 医療機関を受診し、診断書を発行してもらう。
  2. その診断書を事故を担当した警察署に提出する。
  3. 警察が「人身事故」として再分類し、実況見分を実施。

ただし、警察署によっては切り替えに慎重な対応を取る場合もあります。 その場合に利用できるのが「人身事故証明書入手不能理由書」です。

6. 「人身事故証明書入手不能理由書」とは?

これは、やむを得ず物損事故として届け出たが、実際は人身事故だったことを証明するための書類です。 自賠責保険会社に提出することで、人身事故として補償の対象にできる可能性があります。

使用できるケース

  • 事故直後に軽傷だと思い、物損で処理したが数日後に痛みが出た。
  • 警察署が人身事故扱いに応じなかった。

使用できないケース

  • 明らかにケガをしていたのに、刑事罰逃れのために物損事故と偽った場合。
  • 虚偽申告や保険金目的の届け出。

この理由書は「逃げ道」ではなく、正当な理由がある場合のみ認められます。 書類の作成には専門家(弁護士・行政書士等)のアドバイスを受けましょう。

7. 実況見分の重要性

警察が行う実況見分は、事故現場の位置関係や道路状況を詳細に記録する調書です。 この調書があるかどうかで、後の過失割合・賠償金の額が大きく変わります。

  • 被害者の主張を裏付ける「公的な記録」になる。
  • 裁判や紛争処理センターでの重要な判断資料となる。
  • 人身事故扱いでなければ作成されない。

物損事故のままだと、実況見分調書が存在しません。 「証拠がない=主張できない」となるリスクを避けましょう。

8. 保険会社とのやりとりに注意

保険会社の担当者は、あくまで「相手方の代理人」です。 「治療はもう十分では?」などの発言に流されず、 痛みが残る場合は主治医と弁護士の意見を優先してください。

また、交渉中に提出した資料や診断書は、すべてコピーを保管しておくと良いでしょう。

事故後の示談交渉は、医学的知識と法律知識が必要な高度なプロセスです。 「保険会社の言う通りに進める」のではなく、被害者側の視点で正当な補償を求める姿勢が重要です。

9. 弁護士・専門家への相談をためらわないで

警察・保険・医療、それぞれの立場で扱う領域が異なるため、被害者が一人で全てを理解するのは困難です。 事故の初動対応・診断書提出・人身切り替え・後遺障害申請まで、 経験豊富な専門家に相談することで、最終的な補償額や解決スピードが大きく変わります。

  • 弁護士:法的手続き・交渉・損害賠償請求を代行
  • 整骨院・接骨院:医師の指導下での治療・施術証明書の発行
  • 行政書士:自賠責保険請求や入手不能理由書の作成支援

初回相談は無料の事務所も多くあります。事故後の混乱時こそ、早期相談が解決の近道です。

交通事故の「届出」と「証拠確保」から全てが始まります

物損処理のままでは、本来受けられる補償を逃してしまう可能性があります。 警察・保険・医療の間をつなぎ、あなたの権利を守るサポートを行っています。

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