交通事故の慰謝料請求ガイド
「何から始める?」「どの書類が必要?」「相場は?」——示談・ADR・調停・裁判の選び方から、増額のコツ・減額リスクまで、初めてでも迷わないよう要点を一冊化。
交通事故で請求できる「慰謝料」とは?
慰謝料は、事故により受けた精神的苦痛を金銭で補償するものです。請求できる慰謝料は主に次の3種。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
ケガの治療に伴う痛み・不自由・時間的拘束等に対する補償。
後遺障害慰謝料
治療後も残った障害により将来にわたり受け続ける精神的苦痛の補償(等級認定が前提)。
死亡慰謝料
被害者本人の苦痛と、近親者が受ける深い悲嘆に対する補償。
原則として人身事故が対象。物損のみは慰謝料対象外が原則ですが、例外的に認められる裁判例もあります(ペット・墓石・家屋等)。
慰謝料請求の全体フロー(俯瞰)
- 事故発生・通報・受診(人身扱いの届出/初診の記録は後に重要)
- 治療・リハビリ(頻度・継続性が後の評価に直結)
- 症状固定 → 後遺障害申請(該当者)
- 示談交渉(金額・過失割合・既払い整理)
- 不成立時の選択:ADR/調停/訴訟
- 支払い(示談・和解・判決に基づく入金)
目安のタイミング:軽傷の人身であれば、治療終了後おおむね2〜3か月以内に示談・入金まで到達するケースが多め。後遺障害申請があると数か月〜伸びやすい。
入金はいつ?|受け取り時期の目安
- 示談成立 → 入金:社内精算を経て1〜2週間程度が一般的。
- 早期受取りの選択肢:被害者請求(自賠責分の先払い)/仮渡金(ケガの程度に応じた前払い)/内払い(合意が必要)。
※被害者請求の上限は傷害総額で自賠責の支払限度内。残額は示談後に任意保険から精算。
請求の方法と注意点(3ルート)
(1)示談交渉(任意保険と話し合い)
内容:賠償項目の認定、過失割合、金額、既払い整理、支払時期など。
注意:保険会社提示は任意保険基準。弁護士基準とのギャップが大きいことが多く、根拠を持って反論・立証を。
(2)ADR・調停・訴訟(示談が難航したら)
- ADR:第三者(弁護士等)が仲介。柔軟・迅速・費用控えめ。
- 民事調停:裁判所の調停委員が関与。合意が必要。
- 訴訟:判決で確定。弁護士基準の金額に沿う判断になりやすいが、時間と手続負担増。
(3)被害者請求(自賠責に直接)
示談前でも自賠責分の支払いを先行させられます。
【主要書類】支払請求書/交通事故証明書/診断書・診療報酬明細/通院交通費明細/休業損害証明(該当時)ほか。
死亡事故では戸籍・死亡診断書等が追加。
ここは外せない:慰謝料請求の3つの要点
- 時効管理:人身は原則5年が目安(起算点は類型により異なる)。交渉が長期化しそうなら、時効の完成猶予・更新の手当を。
- 基準差の理解:自賠責基準(最低補償)/任意保険基準(非公開)/弁護士基準(裁判例準拠)。同じ事案でも2倍前後の差が出ることは珍しくありません。
- 通院実績:初診の早さ・通院頻度・継続性が評価の土台。途切れの少なさと医師の指示順守が重要。整骨院は医師の関与・紹介があると安全。
相場と計算の考え方(ポイントだけ簡潔に)
入通院慰謝料
- 自賠責:日額4,300円×対象日数(「治療期間」か「実通院×2」を含む調整)
- 弁護士基準:算定表で入院・通院の期間から決定(軽傷表/重傷表)。
後遺障害慰謝料
等級ごとに相場が設定(弁護士基準は14級:110万円〜1級:2,800万円が目安)。等級認定の質が勝負所。
死亡慰謝料
弁護士基準の目安:一家の支柱:2,800万円/配偶者・母親:2,500万円/独身者・子:2,000〜2,500万円。
※上記は「慰謝料」部分。ほかに逸失利益・葬祭関係費など。
増額・減額につながる具体事情
増額が見込める例
- 悪質運転(酒気帯び・著しい速度超過・信号無視・救護義務違反など)
- 加害者の不誠実な態度(虚偽・挑発・謝罪拒否 等)
- 治療の負担が特に重い(長期入院・再手術・麻酔困難)
- 家族への影響(幼子の心的外傷、介護転化、家計急変)
減額に注意したい例
- 通院の中断・頻度不足(必要性への疑義)
- 心因・身体的素因が大きい(症状拡大への寄与)
- 過失割合(過失相殺で受取総額が低下)
- 損益相殺の誤処理(対象外まで控除してしまうミス)
必要書類のチェックリスト(被害者請求や示談で使う代表例)
| 書類 | どこで/誰が | ポイント |
|---|---|---|
| 交通事故証明書 | 自動車安全運転センター | 人身扱いの記載が望ましい |
| 診断書・後遺障害診断書 | 医師 | 症状の推移・所見・治療内容を過不足なく |
| 診療報酬明細・領収書 | 医療機関 | 日付・点数・金額の整合 |
| 通院交通費明細 | 本人作成 | 経路・回数・金額の記載 |
| 休業損害証明 | 勤務先等 | 就労実態・日割換算などの根拠 |
| 戸籍・死亡診断(死亡事案) | 役所・医師 | 相続人確認・法的請求者の特定 |
よくある質問(抜粋)
Q. 慰謝料以外に何が請求できますか?
治療費・通院交通費・休業損害・付添費・後遺障害逸失利益・将来介護費・葬祭費・車両修理費・代車費用・評価損 等。
既払い(病院への直接立替など)は最終精算で控除。
Q. 慰謝料に税金はかかりますか?
原則非課税。ただし、賠償趣旨を超える過大な見舞金の扱い等は例外の余地があるため、個別は専門家へ。
Q. どの基準で交渉すれば良い?
最終解決を弁護士基準で目指すのが合理的。実費・既払い・損益相殺の整理、過失割合の反証、等級認定の補強がカギ。
弁護士に相談・依頼するメリット(実務目線)
- 増額余地の可視化:弁護士基準での再試算・判例相場とのギャップ提示
- 手続の短縮化:書類収集・主張整理・相手方折衝の集約でタイムロスを抑制
- 精神的負担の軽減:保険会社対応を移譲して治療・生活再建に集中
- 費用リスクの抑制:弁護士費用特約の活用で自己負担ゼロ〜小額に収まるケース多数
※弁護士費用特約は自動車保険以外(火災・クレカ付帯等)についていることも。家族名義でも使える場合あり。
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