代車料その1保険会社の誤解と対処法
1. 代車料は「間接損害」ではない
保険会社が「代車料は間接損害だから払えない」と述べる場面がありますが、これは誤りです。
代車料は、事故で自車が使用不能となったことに伴う直接的・相当因果関係のある費用として、原則賠償対象です(過失がある場合は過失割合に応じた減額)。
要点 「過失が1割でもあれば全額否認」などの無過失限定の社内ルールは法的根拠に乏しく、交渉で是正可能です。
2. 認められやすい基本要件
| 要件 | 実務ポイント |
|---|---|
| 実際に代車を有料で使用 | 「仮定の代車料」は不可。 請求書・領収書・契約書・貸渡証等で実搭載費用を裏付け。 |
| 必要性(不可欠性)がある | 通勤・通院・業務・送迎・生活必需の用途を具体化。 公共交通の代替困難性(本数・距離・所要時間)をメモ化。 |
| グレードは相当範囲 | 原則「同等~下位」。 高級外車→国産中級で代替が相当。業務上必要な車格・架装は資料で立証。 |
| 期間は合理的な範囲 | 修理可能:目安1~2週間程度。 買替必要:目安~1か月(見積・発注・登録の現実的日数で補強)。 |
上記を満たせば、「日常・通勤・仕事で必要」「実際に使用」の代車料は、裁判実務上も比較的認められやすいテーマです。
3. 保険会社が口にしがちな「誤解」リスト
- 誤 代車料は間接損害で不可 → 正 相当因果関係があれば直接損害として賠償対象。
- 誤 被害者に過失があれば全否認 → 正 過失相殺で按分するのが原則。
- 誤 高級車なら同格代車で全期間OK → 正 原則相当車格(同等~下位)。高級・特殊用途は業務上必要性の立証が必須。
- 誤 修理完了まで無制限に認める → 正 合理的期間に限定(修理遅延の事情・部品滞りの証拠で延伸可能)。
4. 代車料を通すための「資料セット」
- 代車の契約書・領収書・貸渡証(日割単価・期間が分かるもの)
- 必要性メモ(通勤先住所・出勤時刻・公共交通の所要時間/本数・家族送迎の有無 など)
- 修理工程の証明(見積書・写真・部品発注書・入庫/出庫予定・遅延理由)
- 買替の場合:見積・発注日・納期回答・登録日程の記録
- 車格の相当性資料(自車の諸元・用途、業務上の要件や架装必要性)
メール/LINEのやり取り、修理工場の進捗メモ等も期間の合理性を補強します。
5. よくある落とし穴と回避策
- 「実際に借りていない」請求 → 仮定・相場ベースは不可。実支出ベースで。
- 高額・過剰グレード → 相当車格へ見直し。やむを得ない場合は用途資料を厚く。
- 必要性の説明不足 → 通勤表・シフト表・地図・ダイヤで代替困難性を可視化。
- 長期化の正当化欠如 → 部品欠品・工場混雑・登録待ちなど客観資料を確保。
担当者の社内基準をそのまま受け入れると不利に。
食い違いが続く場合は弁護士交渉で是正を図るのが合理的です。
6. まとめ
- 代車料は直接損害で、要件を満たせば認められやすい。
- 鍵は実使用・必要性・相当車格・合理的期間と資料整備。
- 「無過失でなければ不可」等の主張は法的根拠に乏しいことが多い。











