自賠責保険の慰謝料をゼロから理解する
最低限の補償=自賠責基準。入通院は日額4,300円、後遺障害は等級で32万〜1,850万円、死亡は400万〜1,350万円。任意保険との関係や請求手続き、損しない進め方まで。
自賠責保険とは?補償内容を解説
自賠責(自動車損害賠償責任保険)は強制加入。人身事故の最低限補償のみが対象で、物損は対象外です。
| 区分 | 主な補償項目 |
|---|---|
| ケガ | 治療関係費/入通院慰謝料/休業損害 など |
| 後遺障害 | 後遺障害慰謝料/後遺障害逸失利益 など |
| 死亡 | 死亡慰謝料/死亡逸失利益/葬祭費 など |
対象外:車の修理費・評価損・代車費用・積載物損・ペット治療費 など
慰謝料は「自賠責基準」で計算される
自賠責は国定の基準で算定(最低額)。他の基準との違いは以下のとおり。
| 基準 | 概要 | 相場感 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 法令に基づく最低補償 | 最も低い |
| 任意保険基準 | 各社内基準(非公開) | 自賠責と同等〜やや高い |
| 弁護士基準 | 裁判実務の基準(赤い本) | 最も高く法的正当性あり |
自賠責の慰謝料計算
入通院慰謝料|4,300円 × 対象日数
対象日数=治療期間 と 実治療日数×2 の短い方(2020/3/31以前は4,200円)。
| 治療期間(実通院) | 自賠責 | 弁護士基準(重傷/軽傷) |
|---|---|---|
| 1か月(5日) | 4.3万円 | 28万 / 19万 |
| 1か月(10日) | 8.6万円 | 28万 / 19万 |
| 1か月(15日) | 12.9万円 | 28万 / 19万 |
| 2か月(10日) | 8.6万円 | 52万 / 36万 |
| 2か月(20日) | 17.2万円 | 52万 / 36万 |
| 2か月(30日) | 25.8万円 | 52万 / 36万 |
| 3か月(20日) | 17.2万円 | 73万 / 53万 |
| 3か月(40日) | 34.4万円 | 73万 / 53万 |
| 3か月(60日) | 51.6万円 | 73万 / 53万 |
診断書の「治癒見込・継続・転医・中止」記載で7日加算あり。加算後も「実治療日数×2」との短い方を採用。
後遺障害慰謝料|32万〜1,850万円
等級と被扶養者の有無で決定。以下は主要抜粋(万円)。
| 等級 | 扶養あり | 扶養なし |
|---|---|---|
| 1級・要介護 | 1,850(1,800) | 1,650(1,600) |
| 2級・要介護 | 1,373(1,333) | 1,203(1,163) |
| 1級 | 1,350(1,300) | 1,150(1,100) |
| 2級 | 1,168(1,128) | 998(958) |
| 3級 | 1,005(973) | 861(829) |
| 4〜14級 | 扶養有無で変動なし:4級737 / 5級618 / 6級512 … 14級32 | |
()は2020/3/31以前事故。むちうちは12級 or 14級に認定されうる。
死亡慰謝料|400万〜1,350万円
| 内訳 | 金額 |
|---|---|
| 被害者本人分 | 400万円(旧350万円) |
| 遺族分:遺族1名 | +550万円 |
| 遺族分:遺族2名 | +650万円 |
| 遺族分:遺族3名以上 | +750万円 |
| 被扶養者あり | 上記に+200万円 |
請求で損をしないための注意点
- 上限額:傷害120万/後遺障害75万〜4,000万/死亡3,000万(治療費・休業損害等含む)
- 時効:傷害=事故翌日から3年、後遺障害=症状固定翌日から3年、死亡=翌日から3年
- 過失相殺:過失が7割未満なら減額なし。7割以上で段階的に2〜5割減額
自賠責から慰謝料をもらう手続き
(1)被害者請求|示談前でも可能
被害者が自賠責に直接請求。審査後に自賠責基準で支払い。早く資金が必要なときに有効。
(2)加害者請求|任意一括対応で適用
任意保険(または加害者)が先払い→自賠責分を清算。請求窓口が一本化され手間が少ない。
(3)仮渡金請求|前払い制度
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 死亡 | 290万円 |
| 重い傷害(例:大腿骨骨折 等) | 40万円 |
| 一定の傷害(入院等) | 20万円 |
| 11日以上の治療 | 5万円 |
書類不備がなければ約1週間程度で入金目安(制度上の標準)。
自賠責と任意保険の関係|両方から受け取る
限度額までは自賠責、超過分は任意保険。重複支払いはなし。
| 項目 | 自賠責 | 任意保険 |
|---|---|---|
| 加入義務 | あり(強制) | なし(任意) |
| 基準 | 法令(自賠責基準) | 各社基準(非公開) |
| 物損補償 | なし | あり(契約内容による) |
両方からもらう方法
- 被害者請求+任意保険へ不足分請求(早期資金確保向き)
- 任意保険一本で示談→社間清算(手間を省く)
任意保険未加入・不使用の加害者の場合、超過分は加害者本人へ請求。
自賠責は低額。弁護士基準での増額を目指す
- 任意保険が提示するのは概ね「自賠責〜社内基準」。弁護士基準との差が大きい。
- 弁護士介入で裁判リスクが顕在化→示談で相場に近づく。
- 弁護士費用特約があれば自己負担ゼロ〜小。家族の特約が使える場合も。












