まず知る人身事故の慰謝料|種類・相場の出し方・増額のコツ
「最初の提示=適正」とは限りません。どの基準で計算するかと通院・立証の設計で金額は大きく動きます。
1. もらえる慰謝料の種類(人身事故)
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
けがの痛み・検査やリハビリ等の負担に対する補償。
後遺障害慰謝料
症状固定後も残る不自由に対する補償(等級認定が前提)。
死亡慰謝料
被害者本人と遺族の深い精神的苦痛に対する補償。
物損のみの事故は原則対象外。負傷があるなら診断書を取得し人身扱いへ。
2. 金額が変わる“3つの基準”
| 算定基準 | 概要 | 水準の目安 | 主な利用場面 |
|---|---|---|---|
| 自賠責基準 | 法律上の最低補償 | 低い | 自賠責保険の支払い |
| 任意保険基準 | 各社独自(非公開) | 自賠責〜やや上 | 任意保険の初回提示 |
| 弁護士基準(裁判基準) | 判例ベースの適正評価 | 最も高い | 弁護士交渉・裁判 |
注意:任意保険の“最初の金額”はあくまでたたき台。弁護士が入って初めて裁判(弁護士)基準での交渉が通りやすくなります。
3. 相場と計算方法(入通院/後遺障害/死亡)
3-1. 入通院慰謝料の目安と計算
※数値は2020年4月以降発生の事故を想定し、おおまかな目安として小幅に丸めています。
| 通院期間 | 自賠責の概算 | 弁護士基準(重めの症状) | 弁護士基準(むちうち等) |
|---|---|---|---|
| 1か月 | 約13.0万円 | 約27〜29万円 | 約18〜20万円 |
| 2か月 | 約26.0万円 | 約50〜53万円 | 約35〜37万円 |
| 3か月 | 約39.0万円 | 約72〜74万円 | 約52〜54万円 |
| 4か月 | 約51.5万円 | 約88〜91万円 | 約66〜68万円 |
| 5か月 | 約64.5万円 | 約103〜106万円 | 約78〜80万円 |
| 6か月 | 約77.5万円 | 約114〜117万円 | 約88〜90万円 |
弁護士基準の出し方
入院・通院の月数を算定表(重傷用/軽傷用)に当てはめる方式。
例:入院0・通院90日 → 重め約73万円/軽め約53万円。
自賠責の出し方
4,300円 ×(治療期間 or 実治療日数×2 の短い方)
例:治療90日・通院50日 → 4,300×90=約38.7万円。
3-2. 後遺障害慰謝料(等級別の相場)
| 等級 | 自賠責の目安 | 弁護士基準の目安 |
|---|---|---|
| 1級(要介護含む) | 1,150〜1,650万円 | 2,800万円 |
| 2級(要介護含む) | 998〜1,203万円 | 2,370万円 |
| 3級 | 861万円 | 1,990万円 |
| 4級 | 737万円 | 1,670万円 |
| 5級 | 618万円 | 1,400万円 |
| 6級 | 512万円 | 1,180万円 |
| 7級 | 419万円 | 1,000万円 |
| 8級 | 331万円 | 830万円 |
| 9級 | 249万円 | 690万円 |
| 10級 | 190万円 | 550万円 |
| 11級 | 136万円 | 420万円 |
| 12級 | 94万円 | 290万円 |
| 13級 | 57万円 | 180万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
むちうち:14級が多め(重い症状で12級の余地)。同じ等級でも基準により数百万円の差がつき得ます。
3-3. 死亡慰謝料(本人+近親者)
| 区分 | 自賠責の構成 | 弁護士基準の相場 |
|---|---|---|
| 一家の支柱 | 本人400万円+遺族加算(条件により最大750万+扶養200万) | 2,800万円 |
| 配偶者・母親 | 同上 | 2,500万円 |
| 独身男女・子・幼児 | 同上 | 2,000〜2,500万円 |
自賠責の最高構成でも約1,350万円程度。弁護士基準との差は1,000万円超となることが珍しくありません。
4. 少しでも多く受け取る実務ポイント
① 受診は“当日〜3日以内”
診断書→人身届出→通院計画。整形外科中心、定期再診で必要性を維持。
② 後遺障害は“準備勝負”
症状固定→後遺障害診断書→被害者請求で有利資料を添付。
③ 過失割合を鵜呑みにしない
1割違うと総額は大幅減。事故態様・立証資料で精査。
増額事由の例
- 加害者の悪質・不誠実(飲酒・信号無視・虚偽供述 等)
- 重症・手術の多回数・生死の境の苦痛、学業/就労への重大影響 等
減額リスクの例
- 通院頻度が少なすぎる/受診間隔が空く
- 医師許可なしで整骨院のみ通い
- 医学的必要性の乏しい長期入院・通院
弁護士基準=弁護士の介入が事実上の前提。費用は弁護士費用特約(多くは費用〜300万円・相談料〜10万円まで補償)で自己負担ゼロになり得ます。
5. 受け取りまでの流れ(フローチャート)
- 治療開始:整形外科で診断書→人身扱いに切替/届出
- 完治 or 症状固定:完治なら示談へ/残存なら等級申請
- 示談交渉:基準・過失・項目漏れを精査し交渉
- 合意・振込:示談成立→通常は約2週間で振込処理
示談で折合わなければ、ADRや訴訟での解決も選択肢。
6. 慰謝料増額の事例(アトムの解決例)
むちうち(等級:非該当)
- 当初:47万円 → 解決:約160万円
- 約3.4倍相当の増額
- 通院経過の整合性・必要性を整理し反映
むちうち(等級:12級)
- 当初:256万円 → 解決:約680万円
- 約2.7倍へ。弁護士基準で再算定
- 後遺障害に伴う将来損害も適切に主張
鎖骨骨折(等級:10級)
- 当初:621万円 → 解決:約2,280万円
- 約3.7倍相当。可動域・就労影響を反映
- 遠隔相談でスピーディに対応
※上記は実情に基づく目安へ小幅丸め。最終額は症状・通院・過失・収入・立証の充実度で変動します。
7. 無料相談のご案内(示談前がおすすめ)
- 提示額の妥当性チェッカー(弁護士基準で概算)
- 診断書・検査・通院頻度のアドバイス
- 過失割合・将来損害・項目漏れの洗い出し
- 弁護士費用特約の適用可否チェック
※本ページは一般的な解説です。個別判断は主治医・保険会社・担当弁護士とご確認ください。












