この記事でわかる慰謝料の相場・計算基準・増額のコツと注意点を一冊化
慰謝料は「痛み・通院負担・喪失の苦しみ」への金銭評価。基準の選び方と立証の積み上げで金額は大きく変わります。まずは“いまの提示が適正か”を、相場から確認しましょう。
1. 慰謝料の概要と3種類
交通事故の慰謝料は、被害者(遺族を含む)が受けた精神的苦痛の緩和を目的とする金銭です。代表的な区分は次の3つ:
入通院慰謝料
けがの痛み/治療・通院負担に対する補償。
後遺障害慰謝料
残存する症状・生活不自由に対する補償(等級認定が前提)。
死亡慰謝料
被害者本人と遺族の喪失・悲嘆に対する補償。
※物損事故のみ(けが無し)は原則として慰謝料対象外。負傷があるなら人身扱いを。
2. 相場早見表(弁護士基準の目安)
入通院慰謝料(通院1〜6か月の目安)
| 通院期間 | 自賠責基準(参考) | 弁護士基準(重傷) | 弁護士基準(軽傷*) |
|---|---|---|---|
| 1か月 | 約12.9万円 | 28万円 | 19万円 |
| 2か月 | 約25.8万円 | 52万円 | 36万円 |
| 3か月 | 約38.7万円 | 73万円 | 53万円 |
| 4か月 | 約51.6万円 | 90万円 | 67万円 |
| 5か月 | 約64.5万円 | 105万円 | 79万円 |
| 6か月 | 約77.4万円 | 116万円 | 89万円 |
*軽傷=むちうち・打撲など他覚所見に乏しい症状の目安
後遺障害慰謝料
| 等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級(要介護含む) | 1150〜1650万円 | 2800万円 |
| 2級(要介護含む) | 998〜1203万円 | 2370万円 |
| 3級 | 861万円 | 1990万円 |
| 4級 | 737万円 | 1670万円 |
| 5級 | 618万円 | 1400万円 |
| 6級 | 512万円 | 1180万円 |
| 7級 | 419万円 | 1000万円 |
| 8級 | 331万円 | 830万円 |
| 9級 | 249万円 | 690万円 |
| 10級 | 190万円 | 550万円 |
| 11級 | 136万円 | 420万円 |
| 12級 | 94万円 | 290万円 |
| 13級 | 57万円 | 180万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
死亡慰謝料
| 区分 | 自賠責基準(遺族加算含む) | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 一家の支柱 | 〜1350万円程度* | 2800万円 |
| 配偶者・母親 | 〜1350万円程度* | 2500万円 |
| 独身男女・子・幼児 | 〜1350万円程度* | 2000〜2500万円 |
*自賠責は本人・遺族の合算で構成。任意保険基準は非公開で概ね自賠責相当〜やや上乗せ。
3. 金額差が生まれるワケ:3つの計算基準
| 基準 | 概要 | 水準 | 誰が用いる? |
|---|---|---|---|
| 自賠責基準 | 法律上の最低限補償 | 低 | 自賠責保険の支払い |
| 任意保険基準 | 各社独自(非公開) | 中 | 任意保険の初回提示 |
| 弁護士基準(裁判基準) | 判例に基づき実損を広く評価 | 高 | 弁護士交渉・裁判所判断 |
弁護士が介入して初めて弁護士基準での増額交渉が現実味を帯びます。
4. 入通院慰謝料の算出イメージ
弁護士基準
入院・通院の月数を算定表に当てはめて算出(重傷用/軽傷用)。例:入院1か月+通院3か月 → 重傷115万円/軽傷83万円の目安。
自賠責基準
1日4,300円 ×「治療期間」または「実治療日数×2」の短い方。例:治療90日・通院45日 → 4,300×90=38.7万円。
※同じ通院でも、医師の診断・画像所見・経過の一貫性で評価が変動します。
5. 損しないための行動指針(増額のコツ)
① 基準の切替
任意保険提示=スタート値。
弁護士基準での再計算と交渉が前提。
② 医療の設計
当日〜3日以内の受診、整形外科中心、
定期再診で必要性を更新。整骨院は医師許可のうえ併用。
③ 証拠の積み上げ
診断書・画像・経過記録・勤務影響の資料化。
“欠落期間”は最小化。
6. 参考:増額事例(むちうち等)
むちうち・14級9号/20–30代会社員
- 保険会社提示:137万円 → 交渉後:312万円
- ポイント:通院経過の一貫性、神経症状の医証補強、弁護士基準での再試算。
7. よくある質問
Q. 入通院は通院だけでも対象?
通院のみでも請求可。ギプス固定など自宅療養が「実質入院」と評価される例もあります。
Q. 減額されやすいケースは?
医師許可なしの整骨院偏重、通院頻度が過小、治療消極、被害者側過失、既往症の影響(素因減額)など。対策で影響を抑えられる余地あり。
Q. 慰謝料以外に何が請求できる?
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 治療費 | 診療・投薬・検査・装具等 |
| 休業損害 | 通院等で減収した部分の補償(家事従事者含む) |
| 逸失利益 | 後遺障害に伴う将来収入の減少 |
| 修理費 | 車両・物の修理/買替等 |
Q. いつもらえる?時効は?
原則、示談成立後に振込(目安2週間)。時効は概ね人身5年・物損3年(起算点に注意)。中断手続で延長可。
8. 無料相談のご案内(示談前がおすすめ)
- 相場チェック:弁護士基準での概算/提示額の妥当性診断
- 医療連携:診断書・検査・通院頻度のアドバイス
- 増額交渉:過失割合・項目漏れ・将来損害の主張整理
- 費用対効果:弁護士費用特約の適用確認(自己負担ゼロの可能性)
※本記事は一般解説です。個別事情により判断は異なります。最終方針は主治医・保険会社・担当弁護士と協議のうえ決定してください。












