解説弁護士基準の慰謝料とは?—3つの基準の“思想差”から、赤い本・症状固定・DMK136まで
同じ事故でも、どの基準で計算するかで慰謝料は変わります。弁護士基準=裁判実務水準を起点に、交渉で何が変わるか、いつ弁護士に頼むべきかをコンパクトに整理。迷ったら早めの相談が鉄則です。
1. 慰謝料は「3つの基準」で結果が変わる
自賠責保険基準
国が最低限の補償を担保するためのミニマム基準。対人のみ・額も限定的。
任意保険基準
各社の社内基準(非公開)。概ね自賠責より高いが、弁護士基準には届かないことが多い。
弁護士基準(裁判基準)
裁判例に基づく実損回復志向の水準。交渉・訴訟で用いられ、最も高額になりやすい。
2. なぜ弁護士基準が高いのか(思想の差)
- 自賠責:全国一律の最低補償を迅速に行う「社会インフラ」。
- 任意保険:各社の経営・料率・過去データ等に基づく内部運用。迅速解決志向。
- 弁護士基準:過去の裁判例に沿い、実際の損害に見合う回復を目指す。根拠の透明性が高い。
3. 3基準のメリット・デメリット早見表
| 基準 | 主なメリット | 留意点(デメリット) |
|---|---|---|
| 自賠責保険基準 | 最低補償を広く迅速に。任意未加入でも対人は一定補償。 | 水準が低い。実損をカバーしきれないことが多い。 |
| 任意保険基準 | 比較的スムーズに解決。実務フローが整備。 | 非公開で根拠が見えにくい。弁護士基準より低いことが多い。 |
| 弁護士基準 | 裁判実務相当で高水準。根拠が明確。 | 交渉や訴訟で時間がかかる場合あり。専門家関与が前提。 |
4. 「赤い本」と過失割合の資料
赤い本=『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部編)。慰謝料だけでなく、積極損害(治療費等)・消極損害(休業損害・逸失利益)も整理され、実務の物差しとして広く参照されます。
過失割合の検討には、別冊判例タイムズ等の資料が実務で多用されます。事故態様別の目安を確認し、適正な過失認定を目指します。
5. 症状固定とDMK136:落とし穴を回避
症状固定とは
医学的に治療継続で改善が見込めない時期。症状固定前は治療費・通院交通費・休業補償、症状固定後は入通院慰謝料の確定、後遺障害があれば後遺障害慰謝料・逸失利益の争点へ。
DMK136の目安
保険実務の便宜的目安:D打撲1か月/Mむち打ち3か月/K骨折6か月。
判定は医師が行います。機械的な打切りに流されず、医師の所見で必要治療を継続。
6. 弁護士に依頼すべき代表ケース
- 提示額が妥当か知りたい:相場・基準差を即時評価。
- 慰謝料を増やしたい:弁護士基準で交渉・訴訟の選択肢。
- 後遺障害:等級認定の資料設計・医証の整備がカギ。
- 交渉負担が大きい:窓口一本化で心身の負担を軽減。
- 過失割合に異議:先例・類型を踏まえて法的主張を整理。
7. 依頼のデメリットと費用特約の使い方
デメリットの把握
- 費用:費用倒れリスクは初回相談で見通し確認。
- 時間:任意提示を受け入れるより解決に時間がかかる場合あり。
弁護士費用特約
1事故あたり上限(例:300万円)で弁護士費用を補償する特約。家族名義の契約でも使える場合があるため、加入状況を要確認。迷ったら早期に「使う前提」で保険会社へ意思表示を。
8. まずは相談:最短ルートで不利を回避
同じ事故でも基準選択・資料の整え方で結果は大きく変わります。初期対応の誤りは取り返しが難しいことも。弁護士基準で進めるか、後遺障害を見据えるか、今の段階で一緒に設計しましょう。
※本記事は一般論です。地域運用や個別事情で対応は変わります。所轄警察・主治医・保険会社・担当弁護士の指示を優先してください。












