自賠責保険の改正2020年4月1日施行のポイント整理
適用対象:2020年4月1日以降に発生した事故(発生日基準)。それ以前の事故は改正前の基準が適用されます。
1. 入通院慰謝料|日額4200円 → 4300円
自賠責の慰謝料は、通院日数や入院日数をもとに日額単価で算定します。改正で日額が100円増額。積み上げで差が出ます。
| 項目 | 改正前 | 改正後 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 入通院慰謝料(1日あたり) | 4,200円 | 4,300円 | 「通院実日数×2」など自賠責計算法に準拠 |
例:延べ通院50日(実日数25日×2換算)→ 改正前105,000円/改正後107,500円。
総額は通院パターンで変動しますが、件数が多い軽傷事案ほど効いてくる改正です。
2. 休業損害|日額5700円 → 6100円
就労者の欠勤や家事従事者(主婦・主夫等)の家事停止について、最低日額の基準が引き上げられました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 | 対象例 |
|---|---|---|---|
| 休業損害(1日あたりの最低額) | 5,700円 | 6,100円 | 就労者の欠勤、家事従事者の家事休業 等 |
家事従事者は通院実日数でカウントされる扱いが多く、診療記録や家事内容の陳述を補助資料として整えるとスムーズです。
3. 入通院看護料|入院/通院とも小幅増
家族等による付き添いが必要と医師が判断した場合の看護料も増額されています。
| 区分 | 改正前 | 改正後 | メモ |
|---|---|---|---|
| 入院付添看護(1日) | 4,100円 | 4,200円 | 医師の指示・必要性の立証が前提 |
| 通院付添看護(1日) | 2,050円 | 2,100円 | 原則、入院の半額水準 |
4. 死亡事故の補償|本人慰謝料・葬儀費の増額
死亡事故では、本人分の慰謝料および葬儀費用の基準額が引き上げられました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 死亡本人の慰謝料 | 350万円 | 400万円 | 遺族構成により加算あり(遺族慰謝料) |
| 葬儀費 | 60万円(原則) | 100万円 | 実費資料の整備で運用が安定 |
死亡に係る自賠責限度額(3,000万円)は据え置き。総額が大きい事案では、任意保険・裁判基準での回収戦略が鍵になります。
5. 後遺障害の慰謝料|12級以上で順次引上げ
後遺障害等級のうち、12級以上の慰謝料額が段階的に増額されています(詳細は等級別の最新表を参照)。
- 対象:後遺障害等級 1~12級(14・13級は据置)
- 実務:等級認定 → 自賠責支払 → 任意保険(弁護士基準)で差額交渉の流れが基本
自賠責の増額はあくまで最低補償の底上げ。後遺障害の立証(医証・検査所見・症状固定時期)が最終回収額を左右します。
6. ここは変わらない|限度額の据え置き
| 区分 | 限度額(据置) | 注意点 |
|---|---|---|
| 傷害(治療費・慰謝料・休損 等の合算) | 120万円 | 超過分は任意保険や加害者賠償で回収 |
| 死亡 | 3,000万円 | 遺族慰謝料・逸失利益は任意保険基準で大きく差 |
| 後遺障害(1級上限) | 4,000万円 | 等級に応じて上限が変動 |
軽傷でも通院頻度が高い・期間が長いと120万円に早期接近。
自賠責枠を意識しつつ、健康保険の活用・医療機関の選定・通院戦略を設計しましょう。
7. 実務対応チェックリスト
- 事故発生日の確認:2020/4/1以降か(自賠責改正の適用起点)
- 通院実績の管理:診療明細・通院カレンダー・領収書を一元管理
- 家事従事者の休損:家事内容・負担減少の具体的記録を残す
- 付添看護:医師指示・必要性の書面化(診療録・指示箋)
- 後遺障害見込み:MRI・各種神経学的検査・可動域検査のタイミングを主治医と調整
- 限度額接近時:健康保険・労災の活用、任意保険・弁護士基準での差額回収を前提に設計
8. よくある質問(FAQ)
Q. 今回の増額で最終的な受取額はどれくらい変わりますか?
A. 事案によります。軽傷事案では入通院慰謝料と休業損害の底上げが効きやすい一方、限度額据置のため、枠に到達する事案では内訳の配分差に留まることもあります。
Q. 後遺障害の増額は大きなインパクトですか?
A. 自賠責は最低補償のため、弁護士基準(裁判基準)との併用が肝心。等級認定の質(医証の充実)が実額を左右します。
Q. いつの時点の基準が適用されますか?
A. 事故発生日で判定します。2020/4/1以降の事故に改正後基準が適用。
9. 2020年民法改正との関係(概略)
- 逸失利益の計算実務:ライプニッツ係数等の見直しで増額に振れる可能性
- 遅延損害金の法定利率:年5%→変動制(原則年3%)で将来賠償の現在価値に影響
- 消滅時効:起算・期間の整理が必要(事故日・症状固定日・請求過程を時系列管理)
※ こちらは自賠責とは別系統のルール。「自賠責の底上げ × 民法改正の評価」で総回収額が変わります。
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