その他の物的損害交通事故による物的損害③
1. 慰謝料は認められる?
「大切にしていた車が壊れた」「買ったばかりなのに…」といった精神的苦痛に対し、物的損害では慰謝料は原則認められません。
法律上、慰謝料は「身体や名誉など人格的損害」に限って認められるため、物の損害(車・衣服・家財など)には適用されません。
例外として、ペットの死亡・負傷などについては慰謝料が一部認められるケースもあります。
ただし、ペットは法的には「物」と扱われるため、金額は極めて限定的です。
2. 評価損(車の価値が下がる損害)
修理をしても車の価値が事故前と同じにならない場合、「評価損」を請求できることがあります。
(1) 技術上の評価損
修理しても外観や機能が完全に回復しない場合の損害です。
ただし、近年は修理技術が非常に高く、認められるケースはごく少数。大破車などに限られます。
(2) 取引上の評価損
修理で外観が戻っても、「事故歴あり」となることで中古車市場で価値が下がる損害です。
評価損が認められやすい条件
・新車登録から3年以内(国産車)または5年以内(外車・高級車)
・走行距離4万km(国産)または6万km(外車)以下
・事故歴が査定に影響する程度の損傷がある
評価損の金額は、一般的に修理費の1〜3割程度。
修理費100万円の場合、評価損は10〜30万円前後が目安です。
慰謝料同様、「持ち主の気持ち」ではなく市場価値の減少が判断基準。
日本の制度上、精神的損害に対しては厳しい運用です。
3. 休車損害(営業用車両の停止期間の損失)
代車費用とは別に、営業車が使えない期間の損失を「休車損害」といいます。
- 個人タクシー:事故で車が修理中は営業できず売上が減少
- 会社保有の営業車:1台減ることで売上全体が低下
ただし、以下のような立証条件が厳しく設定されています。
・他に稼働できる「遊休車」がないこと
・休業期間・収入減を証明する帳簿や運行記録があること
したがって、休車損害は認められる可能性はあるがハードルが高いといえます。
4. 着衣や所持品の損害
事故で破損・汚損した衣服やスマートフォン、メガネなども物的損害として請求可能です。
ただし、新品購入額ではなく事故当時の時価(中古価値)で算定されます。
購入時期・金額を示す領収書などの証拠が重要です。
衣服の場合は減価償却が適用され、使用年数に応じて価値が下がる点に注意してください。
5. 弁護士費用
損害賠償請求のために弁護士へ依頼した費用も、一部が損害として認められる場合があります。
- 裁判で判決が出た場合:認容額のおおむね1割が上限(例:100万円→10万円)
- 弁護士費用特約:加入していれば自己負担ゼロで依頼可能
費用特約は本人・家族いずれかの自動車保険に付帯していることがあります。
一度保険証券を確認してみましょう。
まとめ|その他の物的損害の扱い
| 項目 | 内容 | 認められる可能性 |
|---|---|---|
| 慰謝料 | 物の損害に対する精神的苦痛 | ✕(原則不可) |
| 評価損 | 事故による車の価値低下 | △(条件付き) |
| 休車損害 | 営業車が使えない期間の損失 | △(立証要) |
| 着衣・所持品 | 衣服・スマホ等の破損 | △(時価評価) |
| 弁護士費用 | 賠償請求のための費用 | △(一部または特約で全額) |
いずれも「その他」とされるだけに、認定のハードルは高めです。
しかし、弁護士に相談して主張・証拠を整理すれば、適正な回復を目指すことができます。












