症状固定と言われたら|判断の基準・NG対応・正しい進め方







症状固定と言われたら治療打ち切り前に必ず読むチェックリスト

医師や保険会社から「そろそろ症状固定で」と言われたとき、その一言が今後の補償額を大きく左右します。
症状固定は「これ以上の治療で改善が見込めない状態」を意味し、その時点以降の治療費は原則として賠償対象外。
一方で、適切に進めれば後遺障害の等級認定逸失利益・後遺障害慰謝料の請求につながります。
本記事は、よくある落とし穴と正しい進め方を、実例を交えながら整理しました。

1. 症状固定とは?医療と賠償の「分岐点」

定義:症状固定とは、適切な治療を尽くしても、これ以上の改善が見込めない状態。
医療的には「治療」から「維持・対症管理」へ、法的には「傷害の賠償」から「後遺障害の賠償」へと評価が切り替わります。

重要:症状固定の判断権者は医師です。保険会社ではありません。
ただし、診療録(カルテ)、画像所見、検査所見、経過、通院間隔などの資料が、判断の説得力を左右します。

2. よくある誤解とリスク

NG1:保険会社の打ち切り提案=症状固定だと思い込む。
NG2:「診断書を書けば◯◯万円出ます」と言われて即同意する。
NG3:後遺障害が非該当だったら、また治療費を払ってもらえると考える。

症状固定に同意 → 後遺障害申請 → 非該当となると、その後の保険会社負担の治療費は原則再開されません。
申請前に、医学的根拠の補強資料の整備が必須です。

3. 実例で学ぶ:Aさんのケース(頸椎捻挫)

追突被害で通院3か月。保険会社から「症状固定と後遺障害申請を。非該当でも一時金◯◯万円」と勧められたAさん。
提案に応じて申請したが非該当。以後の治療費負担は打ち切りとなり、痛みが続いても自己負担に。

回避できたポイント:
・症状固定の前に、画像検査(MRI)や神経学的所見の採取・保存。
・通院実日数・間隔の見直し(途切れが大きいと不利)。
被害者請求方式で必要資料を主導して整える(事前認定任せにしない)。

4. 症状固定前にやるべきこと|チェックリスト

  • ① 痛み・痺れ・可動域制限などの症状推移を時系列で整理(メモでも可)。
  • 画像検査(X線、必要に応じてMRI)や神経学的検査の追加を主治医と相談。
  • 通院間隔の空白を最小化(自己判断で中断しない)。
  • ④ 職務・家事・育児への支障(家事減耗、欠勤・休業)を具体的に記録。
  • ⑤ 主治医と症状固定時期の妥当性をすり合わせ(早期すぎる固定は不利)。
  • ⑥ 後遺障害申請は被害者請求を基本に、提出書類を自分側で精査。
  • ⑦ 専門家(交通事故に詳しい弁護士)へ事前レビューを依頼。

「症状固定は延ばせるの?」―
延ばすこと自体が目的ではなく、医学的に必要な検査・治療を“適切な頻度で”継続し、改善見込みがあるかを主治医と丁寧に検討するのが正解です。

5. 後遺障害申請:被害者請求と事前認定の違い

方法 提出主体 メリット 注意点
被害者請求 被害者(代理人可) 提出資料を自分で精査でき、等級認定に有効な所見を網羅しやすい 書類収集の手間・専門知識が必要。弁護士同席が望ましい
事前認定 加害者側任意保険 手続きが楽。保険会社が収集を代行 詳細資料が省略されがちで立証力が弱いリスク

書類の基本セット:後遺障害診断書、診療報酬明細、画像所見(読影所見)、検査結果、事故状況・受傷機転メモ、通院実績(途切れの説明)。

6. 「示談前」の絶対ルール

  • ・後遺障害の結果が出てから示談へ。先に示談は原則NG(再交渉が極めて困難)。
  • ・示談書の放棄条項(清算条項)は、残存症状・将来費用を想定し精査する。
  • ・電話口での口約束は避け、書面・メールでエビデンスを残す。

「いま同意いただければ◯◯万円」—短期決着の誘いは要注意。
等級・逸失利益・将来介護費・器具費用など、後から請求できない可能性があります。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 保険会社に『固定で』と言われました。従うべき?
→ いいえ。症状固定の判断は医師です。改善可能性・検査の有無を再確認しましょう。

Q2. 非該当ならまた治療費を払ってくれますか?
→ 原則、再開されません。申請前に資料を整え、被害者請求で立証力を高めるのが先決です。

Q3. 弁護士費用が心配です。
弁護士費用特約があれば、費用は原則保険会社負担(等級・保険料に影響なし)。家族の契約が使える場合も。

Q4. 異議申立てで覆せますか?
新たな医学的資料(所見の追加、画像の再評価等)がないと難航します。初回申請の質が重要です。

8. 今日からできる3ステップ

  1. 症状ログ化:痛み・痺れ・生活支障を日記化。通院途切れの理由も記録。
  2. 医師相談:必要検査の洗い出し、症状固定時期の再評価、後遺障害診断書のポイント共有。
  3. 専門家レビュー:提出書類一式を弁護士にチェックしてもらい、被害者請求で申請。

9. この記事の要旨

  • ・症状固定は医療と賠償の分岐点。拙速は損失に直結。
  • ・保険会社の打ち切り=固定ではない。医師所見と資料で時期を見極める。
  • ・後遺障害は被害者請求で立証力を最大化。示談は結果確認後。
  • ・弁護士費用特約で費用負担を抑えつつ専門家関与を前提に進める。

「症状固定」と言われたら、いったんストップ

申請前の準備で結果は変わります。
弁護士費用特約があれば自己負担ゼロで相談・依頼が可能。
曖昧なまま進めず、プロと一緒に最適解を選びましょう。

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