自動車保険の基礎知識







自動車保険の基礎知識③治療費の支払い

1. 「一括対応」とは何か

一括対応とは、加害者の任意保険会社が、被害者の治療費を医療機関へ直接・随時支払う制度をいいます。
被害者は窓口での支払いが不要となり、自己負担なく通院を続けられます。

通常の損害賠償手続きでは、被害者が一旦自己負担し、治療終了後に領収書等を提出して請求します。
一括対応はこの不便を解消する仕組みです。

ただし、一括対応には条件があります。

  • ① 保険会社への同意書の提出
  • 自賠責保険の範囲内(120万円まで)での支払い

2. 同意書の役割とリスク

「同意書」は、保険会社が医療機関に対して被害者の治療情報を照会できるようにするための文書です。
内容は、「患者が保険会社に対し、治療内容・費用などの個人情報を開示することに同意します」といったもの。

同意書の主な用途

  • ① 治療費の支払い根拠としての資料取得(診療明細・レセプト等)
  • ② 医師と保険会社の連絡窓口としての使用(治療経過の確認など)

ただし、保険会社が医師に「そろそろ治療を打ち切りませんか?」などの照会を行う場合もあります。
被害者に不利な情報共有がなされる可能性がある点は留意が必要です。

3. 一括対応の終了パターン

① 治療の終了による自然終了

  • 治癒: 症状が改善し、通院の必要がなくなった状態。
  • 中止: 患者が通院をやめた・転院したなど。
  • 症状固定: 改善の見込みがなくなった状態。後遺障害の等級認定へ進む。

② 治療途中での「打ち切り」

「打ち切り」とは、治療の必要がある段階であっても、保険会社が一括対応を終了することを意味します。

打ち切りの主な理由 具体例・解説
① 治療内容・経過への疑義 軽微な事故なのに長期通院が続くケースなど。
② 賠償責任・過失割合への疑義 被害者にも過失が大きい場合、保険会社が過払いを懸念して停止。
③ 自賠責保険からの回収が困難 人身事故届が未提出、空白期間(治療空白1か月超)などで回収拒否。

一括対応の打ち切りは、単なる保険上の手続きにとどまらず、今後の損害賠償交渉全体に影響します。

4. 打ち切りへの対応策

  • 治療の必要性を医師の診断書で証明(症状・通院継続の妥当性を記録)
  • 自費で通院を継続し、領収書を保存(後日請求可能)
  • 早期に弁護士へ相談(過失割合・賠償責任を含め全体調整)

「打ち切り」通知を受けた段階で、専門家へ相談するタイミングと考えてください。
放置すると、後遺障害認定や慰謝料請求にも不利になります。

5. まとめ|知っておきたいポイント

  • 一括対応は便利な制度だが、自賠責の範囲内・同意書提出が条件。
  • 同意書は必要だが、保険会社との情報共有には注意が必要。
  • 打ち切りは早期対応が肝心。医師・弁護士と連携を。

治療費の支払いをめぐるトラブルは、被害者が「制度を知らなかった」ことに起因するケースが多いです。
まずは仕組みを理解し、早めに専門家へ相談しましょう。

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