修理費用の賠償について交通事故による物的損害①
1. 基本原則|この3点を外さない
| 原則 | 要点 | 実務の見るポイント |
|---|---|---|
| ① 事故原因との相当因果 | 事故で生じた損傷に限り賠償対象 | 傷の位置・高さ・形状が相手車の損傷と整合するか |
| ② 最低限回復(原状回復の必要最小限) | 「使える状態」まで戻す費用が上限 | 板金で直る箇所は交換費用×/広範囲の塗り直しは過剰× |
| ③ 時価額超過不可(全損ルール) | 修理費が時価を上回る分は原則× | 「修理費」と「時価額」の安い方が賠償上限 |
①②の認定は、修理工場(見積)と相手保険会社アジャスターの協議(=協定)で確定するのが通例。
進捗が滞るときは「協定済みか」を定期確認しましょう。
2. 事故原因と損傷の突合|「一見その傷も事故由来」に要注意
フェンダー・バンパー・ホイールの高さ・擦過方向・変形量を総合して原因性を判断します。
既存傷や別事故の傷が混在すると、その部分は賠償対象外になりがちです。
- 写真は多角度・近接・全景の3点セットで保存
- 相手車の損傷写真やドラレコ映像があれば確保
- 見積書の「交換/板金/塗装」の内訳は事故部位ごとに分解
3. 「最低限回復」の線引き|過剰修理は否認される
賠償は「趣味的こだわり」ではなく、社会通念上の使用可能性を基準に判定されます。
- 板金で機能・外観が回復するなら部品交換は不可
- 色合わせのための広範囲塗装は基本的に不可(必要最小限のみ)
- 新車水準の完全復元までは求められない
工場には「賠償実務に通じた見積(過剰項目は別計上)」を依頼。
協定が早まり、否認→差戻しのロスを防げます。
4. 時価額(全損)ルール|「修理費」との綱引き
修理費が時価額を超えると、その超過分は原則請求不可(経済的全損)。
(1) 時価額の把握方法
- レッドブック(有限会社オートガイド)掲載価格がベース
- 走行距離・年式・グレード・装備で補正
- 掲載なし車種・年式は減価償却法や実取引相場(カーセンサー/グーネット等の掲載証拠)で立証上乗せを狙う
(2) 例外・救済の打ち手
| 手段 | 概要 | ポイント |
|---|---|---|
| 自車の車両保険 | 保険契約内容により時価超も補償可 | 等級・免責・将来保険料の上昇を要確認 |
| 相手の対物超過賠償特約 | 相手保険の特約で時価超部分をカバー | 相手保険に必ず確認(黙っていると出てこないこと多し) |
例:修理費200万円/時価50万円 → 通常は50万円が賠償上限。
ただし上記特約・自車両保険の活用で救済余地あり。
5. 協定(見積妥当性の合意)を早めるコツ
- 工場に事故部位ごとの写真・作業根拠を添付してもらう
- 交換理由(安全性・強度・メーカー指定)を文言化
- 「過剰と見なされやすい項目」は別見積に分離
- 進捗は「工場」「相手保険」「自身の保険」へ並行確認
6. よくある質問(簡易版)
Q1. 新品部品で直したい。純正新品は全額出る?
安全・性能回復のために新品が必要と合理化できれば通りやすいですが、単なる見栄え目的は困難。(再生部品・中古部品採用の打診あり)
Q2. 先に自腹で直してしまった…取り戻せる?
協定前着工でも、事故原因性・必要最小限・時価内が立証できれば回収可能。ただし領収書・作業明細・写真が鍵。
Q3. 時価が低すぎると言われた
同条件の実売相場データ(複数件・スクショ日付付)で反証を。装備・状態の優位(ワンオーナー、点検記録簿等)も提示。
7. 交渉チェックリスト
- [ ] 事故部位の写真(全景・近接・角度違い)を保存
- [ ] 見積は部位別・工程別に分解
- [ ] 交換理由・安全根拠を文書化
- [ ] 協定成立の有無を定期確認
- [ ] 全損時の救済ルート(対物超過・車両保険)を照会
- [ ] 実取引相場の資料を準備












